レポート 初心者登山教室「危険な箇所の通過法」【丹沢・大山三峰山】

もっとも大切なのは一歩一歩を確実に歩くこと

2月のテーマ「ロープワーク&危険な箇所の通過法」の大山三峰山での実地講習レポートです。
出発時にカシオの登山用リストウォッチ「プロトレック」を腕に着けて高度計を見ながら登っていただきました。


丹沢の東の端に位置する大山三峰山は、痩せた尾根の登山道や岩場にクサリ、ハシゴが設置された箇所がルート上に続きます。用心深く確実に通過してゆけば、難しいというほどではありません。ただ、注意すべき危険を見きわめるルートファインディングにおいて、経験の少ない初心者が安易に立ち入ることは危険であるという点で、初心者向きではないとされています。

危険といわれる箇所であっても、一般ルート(一般登山道)といわれる登山道は、山の歩き方がしっかり身についているなら、基本的には足でしっかり歩き、必要に応じて補助的に手を使ってバランスを保ちながら歩けるルートのことです。ロープやロッククライミング専用の装備が必要となる岩壁や雪の急斜面などは一般ルートとされることはありません。だからこそ、もっとも重要なことは自分の2本の足でしっかり安定を保って歩くことなのです。

▲登山口まで本厚木駅前からバスで約30分

▲30分もバスに揺られた山あいがスタート地点の割には標高はまだ150mほど

小田急線の本厚木駅から宮ヶ瀬行きのバスに乗り、30分ほどの煤ヶ谷(すすがや)で降ります。バス停の先で橋を渡ってバス道から川沿いの道を登ると登山口です。その先に公衆トイレがあるので立ち寄ってから身支度を整え登り始めました。登山口で計画書を提出し畑の脇から山へ向かいます。

▲登山ポストが登山口であることを示します

▲斜面に向かって傾きのある登山道。枯葉に隠れた道の端は踏み外しに注意

▲木の根が絡んで足の置き場に迷うような段差も大股を避けなるべく小刻みに

▲標高350mほどの樹間から三峰山がのぞいています

鹿よけの金網の中へ入ると山には明瞭な踏み跡と道標もよく整備された登山道が続きます。尾根を右手に見ながらいくつかの谷を回り込むように徐々に高度を上げていく道は、谷側である左に向かって少し傾いた箇所が多くバランスを取りながら歩く必要があります。

歩き始めにしては少し長く歩きましたが、1時間ほどで尾根の中心線に上がる手前に物見峠へのトラバース道との分岐があるので、縁台のような広いベンチで小休止。

▲まだ続く登りに備えて厚すぎたレイヤリングを脱いで体温調節

水分補給をしたら、少しわかりづらい分岐(実際出だしでトラバースルートに入りかけました)を三峰山方面へ登ります。短い急登を登ると尾根の中央に出ました。小さな祠とベンチがあります。ここで地形図を見て、標高600mを超えた尾根の屈曲点であることを高度計と合わせて確認。この先地形図では忠実に尾根上を登るように道が描かれていますが、実際はほんの少し尾根の南側斜面をトラバース気味に進む道でした。その先で物見峠から三峰山への稜線との分岐に出ました。

▲稜線の分岐には大きな道標もあり迷う心配はなさそうです

稜線上もほぼ樹林の中に登山道が続くのでほぼ展望はありません。ただ、このルートの難しさを警告する立て札が何度も「引き返す勇気も必要」と警告しています。

稜線に出てしばらくは急な階段下りと幅も広くなだらかな道の繰り返しです。途中、樹林の梢越しに三峰山の連なるピークとその奥に電波塔が立つ大山の山頂がのぞいていました。

▲三峰山南峰(左)と中峰(その右)、北峰(右)の間に大山の山頂(中央)が見えます

▲立て札で繰り返し注意を促されます

▲突然展望がひらけて塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳などが一望に

▲たしかに展望に夢中になりすぎると足もとの崩落を忘れて転落する危険も

進むにつれて「崩壊」「崩落」というキーワードで注意を促す立て札が繰り返し現れます。いちばん目立った「この先、崩落地有り」と大書された看板の奥はまさに足元から土の地面が崩れて50m以上も樹林が失われた急斜面へと落ちているので注意が必要です。そのくせ樹林が無いせいで展望が良く、景色に見とれて踏み外す可能性はたしかにあり、歩く人の注意力の問題ではありますが、危険箇所といえるでしょう。つい写真を撮りたくなりますが、必ず立ち止まってしっかり足場を確かめた上で、周囲に注意をしながら短時間で済ませるようにしたいものです。

さらに進むと目の前に立ちはだかるような三峰山の北峰手前に広々とした鞍部とベンチがあったので、そこでロープワークと簡易ハーネスが必要な場面の説明と、それらを使った安全確保の原理を実際の用具を使いながら説明しました。おそらく一度見聞きしただけでは忘れてしまうと思いますが、そういう方法があるということを知っていただければ十分です。ロープワークといわれるロープの結び方数種類も説明。結び方は帰りのバスでも机上講習で使用するテキストを示して練習しましたが、日常生活でも活用できれば身についたことになります。

▲痩せ尾根の連続も慎重に歩きさえすれば不安は無いもの

さて、三峰山までの岩場が始まり、精神的にもっとも怖い北峰の急斜面の登りです。少しザレて滑りやすい急斜面で片側が谷へ切れ落ち、朽ちかけたロープが取り付けられています。色あせて朽ちかけのロープを掴むのも怖いけれど、使わないのはもっと怖い。単なる登り坂としても相当な急登の部類で、体もまだ高度感に慣れていないので極度に緊張します。

▲ハシゴはグラつきが無いことを確認したらしっかり掴んでへばりつかずにゆっくり確実に

これを登り切るとルートが左に直角に折れていよいよクサリ場とハシゴの連続する痩せ尾根です。クサリは太く新しくピカピカ光るステンレス製で掴めば安心感は十分です。ここではまず簡易ハーネスをクサリに掛け替えながら進むイメージだけ持ってもらいました。そのあとは、十分に注意して三点確保を守れば、岩場自体はクサリを使わなくても安全に登り下りできるレベルであることを説明し、岩場の中にしっかり足を置けるスタンスとガッチリ手で摘めるホールドを探しながら極力クサリを使わない登り下りを練習しながら通過していきました。どうしても不安な時だけクサリに手を添えていつでも掴めるようにしました。

▲ハシゴから微妙な傾斜の木道に移る瞬間、不安定になるのでクサリに手を添えて補助

どんな危険箇所も基本は足で立つしかありません。立ち止まってでも確実なスタンスとホールドを探して、時には下りで後ろ向きに下りることも含めて、どういう手順で三点確保を保ちながら移動していくかのイメージと実際に動きを繰り返すうち、ルートファインディングの力となって自然に身についていきます。

▲気がつけば三峰山の頂上に達していました

もちろん本当にむずかしいと感じたら迷わずクサリを使うことも必要です。クサリに体重を預ける必要がある場面では、まだ他の人が掴んでいるクサリにつかまってはいけません。その人の動きや手を離したと同時にクサリが大きくずれて自分の体が振り落とされる危険もあるからです。クサリは自分だけが使える状態になってから、岩角などの引っ掛かりで途中でずれる心配がないかなど、よく確認した上で体重を預けましょう。

はじめは戸惑いを感じていた岩場の通過も、一つひとつクリアして課題を解いていく楽しさに変われば、疲れを忘れてピークに近づいていけるので、単調な尾根歩きよりも楽に感じる人も少なくありません。ぜひ三点確保を基本にした身のこなしを身につけましょう。

夢中で岩場、クサリ場を通過していたら、三峰山の頂上に出ました。少し手前の道標が立つ小さなピークは三峰山の中峰だったようです。到着した南峰は三角点と頂上標柱とベンチが設置されています。ザックを下ろしてアスザックフーズのフリーズドライスープを作って、昼食のお弁当を食べました。樹木があって景色が良いとは言えませんが、登りきった達成感はたっぷり味わえます。

▲寒い季節も温かいスープが手軽に楽しめます

▲高度計を確認しながら歩く楽しさも

▲高度補正もバッチリ、登山装備の一つとして興味を持ってもらえました

30分ほど休憩したあと、三角点もあり標高が934.6mとわかっているので、プロトレックの高度計を補正してから下山を開始しました。

ここからしばらく急な下りを経て、稜線から谷筋へとくだる下山ルートです。ところどころ小さな岩場やクサリ場がありますから気を抜かずに下りましょう。最後まで慎重に三点確保を基本とする危険箇所の下り方を守っていけば安全に下山できる道です。

▲いきなり急勾配の下り坂ですが、そう長くは続きません

▲斜めに移動しながらの下りはクサリに頼るのはむずかしい。よく見れば多くのスタンスが

▲やはり部分的にはクサリが欲しい下りです

▲木道が砂を大量に被っているのは何故かを推理してみましょう

▲こういう下りは無理せずクサリを併用した方が安全。落ちれば谷まで転落です

▲どこまでクサリに頼れるのか先を見ておくことも重要です

下りはどうしても脚に疲れも溜まってきますし、ピークを過ぎて緊張もゆるみがち。最後まで足の運びには神経を注いで、少なくとも交通機関の及ぶエリアに下るまでは注意しましょう。平らな道でも捻挫や骨折が起きる場合もあるのですから。

▲3月下旬の開花が楽しみなミツマタの群生。大山への登山口でもある不動尻で

▲長い林道歩きを経て、人里へと下りてきました。春の気配を感じて緊張から解放されます

▲バス停に無事到着しました

初心者のみならず、いわゆる一般の登山道で安全確保のためにロープが必要になる場面はまずありません。ロープワークは登山技術というよりむしろ、イザという時(それは案外、都会で遭遇する災害の現場だったりするかもしれません)役に立つ、知っておいて損のない結び方の知識だと考えてください。もし登山の一般的なルートでロープが必要になるとしたら、そこに登りに来ていること自体かなり無謀なことかもしれません。それでもロープを使用するなら、必ずその場に経験豊富なリーダーがいて、正しい使い方をしてこそ安全が確保できるものです。初心者が知識や経験の裏づけなく、むやみに使用することはかえって事故の原因になりかねません。そういう理由で今回の実地講習では、ロープワークはあくまで知識として、ルート上の安全な場所で、必要となる場面とその方法を説明するにとどめました。そのかわり、実際の鎖場やハシゴなどが架けられた危険と思われる箇所では、バランスをくずさない歩き方の基本と三点確保での歩き方に重点を置き、その都度、危険箇所を見落とさないルートファインディングと安全に通過するためのポイントを繰り返し練習しながら歩いていただきました。

今回、ご参加いただきモデルも勤めてくださったMさんは、初心者とはいえ普段から球技で体を動かしていてバランス感覚が良い方だったと感じました。だからと言ってそれだけで安全が保証される訳ではありません。登山には登山に適した歩き方の技術というものがありますし、何よりも人それぞれ自分に合ったレベルの山で無理のないペースで歩くことが基本だということをどうぞお忘れなく。(ひ)

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