Q&Aコーナー「山のお悩みなんでも相談室」〈第2回〉

Q&Aコーナーです。
山にまつわる疑問、
お悩み、道具や技術のこと……
『山仙人』こと
プロガイドの小日向 孝夫 講師がお答えします。

ご質問・ご相談募集中! こちらの投稿フォームからたくさんの投稿お待ちしています。(無記名OK)

<相談6>埼玉県 飯島友子さん 56歳 主婦
Q.ハイキングの装備を揃えたいのですが、注意する事を教えてください。ちなみに日帰りの里山ハイクをしたいと思っています。 

<小日向のお答え>
A.どうせなら5年~10年使える物を選びましょう。まずはトレッキングシューズですが、長い目でみると、足首まで覆われた物を選んだほうがいいでしょう。長いこと歩いたり、急な下りが続いたりすると、疲れ方がゼンゼンちがいますし、捻挫や骨折などの事故に対しても安全性がかなり違います。選び方の基本は、山に履いてゆく靴下をはいて、靴を履いてみて、親指が靴の前に触ったら、踵に指が1本入るくらいが一番いいです。でも、専門店の店員さんにサイズはこれでいいか必ず確認してくださいね。

次にカッパの上下です。サイズは寒い時に、防寒具を下に着ることも考えて、少し大き目を選びましょう。素材は、値段が少し高いですが、必ずゴアテックスなどの防水透湿素材の物を選びましょう。また、必ずフードが付いていることを確認しましょう。カッパと似たような、ソフトジャケットというアウターの中には、フードが付いていない物もありますので。

ザックは必ず店員さんに背面長という、あなたの背中の長さを測ってもらい、あなたの背中の長さに合わせてザックを選んでもらいましょう。大きさ(中に荷物が入る容量は、水が中に何リットルぐらい入るかで言いますが)は、日帰りでも少し大き目の30リッターくらいの物を選びましょう。

出来れば、腰のベルトと胸のベルトが付いているもの。背負いベルトの調整用のベルトも付いているものがいいでしょう。また、出来れば雨蓋は固定式ではなく、ザックの中身の容量によって動くものの方がいいでしょう。将来、泊りがけで山に行く場合、持ってゆくものが増えても入るほうが良いでしょう。

その他、必要なものは、綿ではない、速乾性のポリエステルなどの下着上下。道迷いしないためのコンパスと地図。暗くなっても安心なヘッドランプ。雨が降ってもザックの中身が濡れない、防水用スタッフバッグなどを揃えると安心してトレッキングに行けます。

<相談7>岐阜県 清野友貴子 48歳 会社経営
Q.12年前にひょんな事で右膝のじん帯を損傷してスキーや階段の上り下り等で右膝が痛くって「登山」なんてもう無理かしら? 私は岐阜市ですし、岐阜城と金華山が見えます。なんとかして「金華山」をトレーニング場所にしたい…と思っていますが、膝が痛くない上り方があればその方法や道具等ありましたら、教えて下さい。 

<小日向のお答え>
A.まず用具ですが、様々なサポーターが登山用具専門店で売られています。私の場合は、サポートタイツ(筋肉のサポートをしてくれる、腰から足首まで下半身をピタッとフォローしてくれる伸縮するタイツ)と一番ガッチリしたやはり伸縮性のサポーターを両方とも使っています。さらに、膝に直接キネシオテープという伸縮性のテープを張っても、いいでしょう。

テクニックとしては、ほとんどは下りで膝が痛くなる人が多いのですが、登りでも痛くなるということなので、登りで膝に負担が掛からない方法をお話いたしましょう。まず多少遠回りをしても、なるべく登山道の中でも斜度の緩いところを選んで登る。

次に左右の足の歩幅を、なるべく小さくすることです。斜度の緩いところでは、靴の長さと同じ25~26センチぐらい。急な所では靴の長さの半分ぐらいの12~20センチぐらいにして、ゆっくりと登り、踵から着地して爪先に体重を移すような歩き方をしてみて下さい。

下りは逆に爪先から着地して、後から踵を着くような下り方をしましょう。足の歩幅は、登りの半分ぐらいに狭くします。その代わり、足は速く動かすようにします。つまり、ちょこちょことペンギンのように歩けばよいのです。

もしお年を召した方なら、関節の軟骨が減っている場合があります。その場合は、サプリメントのコンドロイチンとグルコサミンを3週間以上飲んでみて下さい。けっこう効く人が、多いですよ。

登山用のストックを両手に持ち、下りは長めに調整して、自分よりも下に突き、支えにする。登りは短めにして、自分の横に突き、下に押しながら登れば、体力的にも楽になるし、かなり膝の為にもいいですよ。

 <相談8>東京都 入江淑子 60歳 主婦
 Q.富士山頂上にチャレンジしたいのですが靴で悩んでいます。現在は軽登山靴を履いていますが、重く足首が固く感じられます。よいシューズがありましたら教えてください。

<小日向のお答え>
A.富士山はどこの登山口から登っても、標高差で1300~1500メートルもあり登山の中でも、きつい山です。しかも標高が高いので、頂上付近では酸素が薄く、高山病の危険もありますので注意が必要です。

その為には、疲れないように。そして、高度に順応するようにゆっくりと登ることが必要です。そして、あまり知られていないことなのですが、下りも標高差が大きいので、急いで下りると、膝や筋肉を痛めることが多いのです。

登山用の靴の性能は、どちらかと言うと登りよりも下りで発揮されます。確かに、登りは靴が軽いほうが足が上がり易いので、軽い靴のほうが楽ですが、下りは滑り易く上からの加速度が加わるので、足首に大きな力が加わります。したがってガッチリとしていて、足首まで覆われた靴の方がいいのです。足を捻って、捻挫や骨折をしたら大変です。

つまり安全のためにはトレッキングシューズのように、足首までしっかりと覆われたタイプの靴のほうがいいのです。ただし、同じタイプの靴でも、軽い靴はあります。

また、靴選びで注意した方がいいのは、大きすぎるものも良くないし、小さすぎるのも良くありません。厚手の靴下1枚か、薄い靴下と厚手の2枚で、ピッタリというのがいいので、専門店で、納得ゆくまで店員さんを独占して選んでください。

もちろん何足もはいて、店の中を階段も上り下りして、最低30分以上かけてしっかりと選んでください。軽いことはいいことですよ。

もうひとつ、出来たら貴方の足に合わせてフットベットという、敷き革を入れてみたらいかがでしょうか。足にぴったりとして、登りも下りも足の底が靴の中でずれないので、靴ずれもしないし、ピッタリとして靴が軽くなったような気もしますよ。これも専門店で、店員さんに相談してみて下さい。もちろん1つ手に入れれば、どの靴にも使えるし、ふだん街で使っている靴に入れれば、電車の中でもバランスが良くなりますよ。

<相談9>神奈川県 渡邉啓子さん 53歳 パート
 Q.登山とハイキングの違い(境目)はなんですか?

<小日向のお答え>
A.ハイキングとは、特別な用具を使わない山登りを意味します。登山は山を登る行為全体を言います。つまり、岩登りや沢登り、冬山登山、ヒマラヤのピークハントなど8000㍍級の山登りも入ります。

もう少し詳しく言うと、登山用のロープやピッケルやアイゼンなどの、自分の手足以外の用具を使う登山をハイキングとはちがう、登山と言うのです。でも、判りにくいですよね。

ヨーロッパやアメリカは氷河があるので、雪線と言って雪や氷のある場所。あるいは安全を確保するのにロープを使わないと行けない岩場などを登る場合は、ハイキングではなく登山と言っています。

日本は氷河がないので、一年中雪や氷がある場所がありません。したがって考え方としては、日本の夏の登山は通常の登山道から登る場合は、すべてハイキングだと言う人もいるくらいです。

でもまあ、いくら夏でも剣岳や穂高岳、槍ヶ岳などはハイキングとは言えませんよね。ですから、厳密には言えないのですが、ロープやピッケル、アイゼンを使わなくても、もし落ちたら死んでしまうような、危険な岩場や雪渓がある山を登る場合は、ハイキングではない。といったところでしょうか。

つまり日帰りでも、もしズルっと滑って落ちたら死んでしまうようなところへ行く場合は、ハイキングではないと思うのがいいでしょう。もちろん、雪のある冬山へ行く場合は、どんなに低い山でもすべてハイキングではありません。

おわかりいただけましたか?

<相談10>千葉県 佐川咲希 29歳 OL
 Q.危険な目にあったことはありますか。

<小日向のお答え>
A.もちろんありますよ。若いころは、冬山も岩登りもやっていましたから。でも、ここ10年以上は危険な目には遭っていません。と言うか、危険な目に遭わないようにしています。昨年10人が亡くなった北海道の同じコースを、歩いたこともありました。その時は1日目が大雨だったので、私たちは出発を1日遅らせて、歩き始め、3日間晴天でした。槍ヶ岳の頂上で台風に遭って、山小屋で2日間停滞して、天気が回復してから下りてきたこともありました。下りて来たら、途中の橋が流されてロープを張って川の中を歩いたりもしました。つまり、大抵の場合危険は避けられることが多いのです。

危険を避ける要領としては、前もって山小屋に連絡をして情報を掴むことでしょう。山小屋がない所へ行く場合は、困りますよね。その場合は、ロープやテント、予備の食糧などいざという場合を想定して、装備を整えておくことでしょう。携帯は通じないことが多いので、ラジオと天気図用紙を持って行くなど、経験も必要です。

最後に、私が一番危なかったと思った時のことを、お話しておきましょう。学生時代の1月の終わり、谷川岳の一ノ倉沢の中央稜という岩場を登りに行った時のことです。その岩場は40㍍のロープ7ピッチ(300mぐらいの高さの岩場)だったのですが、最初は曇りだったのですが、岩場の中間ぐらいから雪になり岩場を登りきった時は吹雪になっていました。ただちに懸垂下降といって、ロープを伝った下に降り、リッジと言う急な尾根をパートナーと一緒に2人で下り始めると、あちこちの沢からドーンという雪崩の音が聞こえてきました。視界は10~15㍍ぐらいでした。ロープを外してから100㍍位行ったところで、突然前を行くパートナーの足の真ん中から、黒い筋が私の方へ走ってきました。私たちの右側は深い沢、左側は浅い沢ですので、とっさに左側に飛びました。すると、あっという間に大きな亀裂が走り、長さ2~30㍍、幅10㍍ぐらい、厚さ4㍍ぐらいの大きな雪の板が右の沢にド、ドーンと落ちてゆきました。2人とも真っ青になり、「やばい!出合(沢の入り口の安全地帯)まで、全力で走ろう」と言って、走りました。

もう心臓が爆発するかと思いました。いまだに、あんなに全力で走ったことはありません。幸いにして、雪崩にもやられないで戻ってこれました。


 

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