レポート 初心者登山教室「地図読みと自然観察」【武甲山】実地講習

冬こそ地図をたよりに山を歩き回るトレーニングに適した季節です。本格的な寒さがやってきた12月上旬の週末、埼玉県と神奈川県で地図とコンパスの使い方をテーマとした実地講習を行いました。12月8日土曜日の秩父「武甲山」で行った地図読み講習のレポートです。

★山女子クラブの地図読み講習は CASIO の気圧高度・方位・気温計測機能つきリストウォッチ「PROTREK」を無料にてお試しいただき、コンパスと併用した講習を行っています★


2018年の冬到来、厳しい寒さとなったこの日、日本二百名山の一つに数えられる秩父の「武甲山」に登りました。

武甲山は埼玉県秩父市と横瀬町にまたがる標高1,304mの山で、かつては1,334mあった標高が、明治時代からこの山の北側斜面で進められてきた大規模な石灰岩の採掘により山頂の一部まで削り取られてしまったことで、大きく山体が変わってしまっています。現在の山頂には武甲御嶽神社が祀られ、もっとも一般的な登山ルートはその表参道にあたる生川(うぶかわ)沿いの一の鳥居が登山口となります。

▼登山口の一の鳥居で身支度を整え、地形図を見ながら今日の登山ルートを確認します

▼一の鳥居から生川(うぶかわ)に沿って沢筋を登り、途中から尾根を登り山頂へ

▼地図読みの第1歩は、時間をかけて地形図をじっくり見ること。コースの概要を把握します

▼今日の全体像をイメージできたら、コンパスで北を確認し地図の向きを合わせ(地図の整置)

▼今から進む道がどれかを確かめます。出発前に高度計の高度を補正することも忘れずに

▼道の分岐点、橋などの建造物があるような特徴的な場所は現在地を確認しやすいです

▼上の場所の地形図です。⭕️の分岐で南へ沢を渡る橋と、直進後すぐ右(北)に折れる山道に別れます

▼等高線から読み取れる標高とPROTREKの高度計が示す高度も照合して参考にします

▼登山地図には載っているのに地形図には記載のない「不動滝」。上図に示した位置です

地形図を片手に歩きながら、周囲の様子をよく観察しましょう。等高線から山の「尾根」と「谷」を見分けることは、地形を理解するうえでもっとも重要な作業です。道の分岐点ではコンパスを使って、そこまで歩いてきた道の角度、これから進むべき道の角度、進んではいけない別の道の角度などを調べてみましょう。現在地さえしっかり地図上で把握できていれば、地形図と測った角度は一致するはずです。

現在地を確認するために、PROTREKの高度計表示と地形図の等高線が示す標高とが一致(多少の誤差は生じます)しているかどうかも、判断の助けになります。誤差を少なくするために、出発地点や途中で標高がわかる場所では、高度計の補正が必要です。GPSではない高度計は高度による気圧の変化を利用した計器なので、時間とともに大気の気圧配置が変化すると誤差が生じてくるからです。

このように、現在地を正確に把握するためには、地形図から読み取る地形的特徴、コンパスによる方位角、高度計が示すその場の標高など複数の要素を重ねて合わせて判断することで、より正確になるのです。地形的特徴には、明らかな山頂、三角点、送電線や鉄塔、小屋など人工的な建造物もあります。これらは地図上で確実に特定できるので、重要です。

▼尾根をしばらく登るとひときわ目立つ杉の巨木が立つ広場に出ました

▼道標に標高が標示され地形的にも等高線幅が広がり地形図で確認しやすい「大杉の広場」

▼歩いてきた登山道の等高線1000mあたりは線の間隔が広く傾斜がゆるくなります

▼高度計を確認すると若干の誤差が……

▼許容範囲の誤差ですが、PROTREKの使い方に慣れるため、高度計の補正にチャレンジ

▼無事山頂に到着しました。曇り空でしたが群馬県や栃木県の山が見えました

▼山頂から見えた雪の谷川岳、コンパスが示す方位角は351度

一の鳥居登山口からの標高差はおよそ780mほど。でも、地図読みをしながら歩くと思いのほかあっけなく頂上に着いてしまいました。石灰岩の採石場の崖に立ち入ったり転落したりしないように山頂の展望台には鉄の柵が張り巡らされています。山頂からは、雲の多い空ながら、遠くに浅間山や上越国境の谷川岳、上州武尊山、日光方面の山々も流れる雲に見え隠れしていました。

地図読み応用コラム▼
山頂であの山はどこの山? と思った時、コンパスで方位角を測ると正確に調べることができます。「山座同定」といいますが、例えば、武甲山の山頂1,304mの展望台から見える山々が、磁北を0度として右回りに何度の角度にあるのかということを調べるのです。広域の山地図で武甲山山頂から目的の山の角度を調べてみましょう。たとえば、谷川岳なら351度、浅間山なら314度、赤城山の黒檜山なら7度などといったように、特定できるわけです。山に出かける前に、目的の山頂からめぼしい山がどの角度にあるのか事前に調べておけば、山でコンパスを使ってその方位角を測って示されたその先に知りたい山はあるはずです。登ったその時わからなくても、見えた山の方位角を記録しておけば、家に帰ってから地図でその角度を調べることもできますね。もちろん、もっとも基本的で理解しやすい方法は、山頂で、地図を広げてコンパスでしっかり測って地図を正しい方角に合わせて置き(地図の整置)、見える山と地図とを照らし合わせることです。

山頂一帯は風が吹き抜け隠れる場所もほとんどありません。風囲いのある休憩小屋は満員。手短に行動食で昼食を摂り下山することにしました。

計画では登ってきたルートとは異なるルートで下山します。地形図で分岐点の確認と下山路の方向や地形的特徴を大まかに頭に入れる「地図の先読み」をしてから出発しました。

▼消えかかった道標、交差する道も多い。正確なルートを選ぶには注意深い確認を

▼地形図には載っている登山道がすでに閉鎖されいていることもあります

▼下ってきた尾根が平らになり、また登り返す最低部をコルといいます

▼今日はこの「シラジクボ」というコルから分岐するルートで下山します

下山ルートは登山道に平行する作業用林道があり、ところどころで交差するため進むべき方角を錯覚しやすく、他のハイキング客がいったん下って戻ってきたりしていました。ハイキングコースの道標もありましたが、地形図にはないルートが含まれていたり、書き方がわかりにくかったりで、少し判断に迷うところもありましたが地図読みのおかげで迷うことなく無事下山しました。

ルートのわかりにくい箇所はたいてい、計画段階で複数のルートガイドやマップで調べておけば気づくのですが、準備不足も道迷いの一因になることがあることを覚えておきましょう。

一日地図を見ながら山の中を歩き回ると時間の経つのがとても早い気がします。しかし、自分がどこにいるのか、この先どんな道になるのか、山の中のどの辺を歩いているのか、わかっていると気持ちに余裕もできて、より安全な行動につながるのです。

山女子クラブでは地図読み講習を繰り返し計画しています。1回では十分理解できないのが普通です。理解できなかったから無駄だったということはありません。繰り返すことこそマスターへの近道です。

 

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