レポート 地図読み専科・中級編【相模湖〜矢ノ音〜孫山】

山女子クラブの地図読み講習では、地形図とコンパスに加えて、現在地の確認に大きな威力を発揮する高度表示機能付きの登山用腕時計、カシオ『プロトレック』をお試しいただけます。基本的な地図読みでの使用方法を体験しながらマスターできます。

 

地図読み専科講習「地図にない道を歩く【相模湖・矢ノ音】」レポート

地図読みの中級編として実施しています。「地図にない道」を歩く実地講習のレポートです。「地形をたよりに現在地を知り、進路を定める」という一見難しそうですが、実はもっとも基本的な山の歩き方を理解していただくための講習です。地形図に登山道の記入がない部分を地形の特徴を読み取りながら歩きます。

冬枯れの山は地図読み講習に最適です。だから山女子クラブでは、冬でも地図読み講習を実施しています。特に地図読みのスキルアップに効果的な、地図に登山道が描かれていない山を歩くというテーマはおすすめです。

相模湖の北に位置する奥高尾縦走路。その陣馬山と景信山の中間に位置する明王峠の南に派生する尾根上に標高633mのピークがあります。国土地理院の地形図には名前すら記載されていない山。地元・藤野市では「藤野十五名山」の1座として「矢ノ音」と呼ばれています。地元の名山ですから登山道がないわけではありませんが、あえて登山道にはなっていないけれど麓からピークまで明瞭に繋がっている尾根を登ることで忠実な尾根歩きのテクニックを身につけます。

▲身支度は万全に。地形図とコンパスは常に手に持って、現在地を確認しながら進みます。

(※駅などスタート時に標高がわかる場所ではプロトレックの高度表示を補正して誤差を無くしましょう)
駅から目的の尾根の末端目指して道路を行きます。あらかじめ登り口になりそうな場所を見極めておきました。目指すポイントに着いたら、身支度を整えて、いざ道のない山へ突入! 意外にはっきりとした馬の背のような尾根が続き、迷うことはなさそうです。林業で山に入る人がいますから、境界線や管理用の杭がところどころに打ちこまれ人の気配はあります。でも、それがルートを示すわけではないので、進路はあくまで自分で決めなくてはなりません。今回は山登りでもっとも基本となる「尾根をたどる」という方法をとります。

▲冬枯れのおかげで下草もなく見通しが利くので地形がよく見えます。枯葉の絨毯もサクサクと心地よい

▲紫色の線は辿る予定の尾根をなぞったもの。大きな尾根に合流し大きく向きが変わります

最初に取り付いた尾根は一直線に高度を上げていきます。途中で少し傾斜が落ち、わずかに向きが変わった後、大きな尾根にほぼ直角に合流します。これらの地形的特徴を等高線から立体的にイメージし、進路の方位をコンパスで確認。さらに高度計の示す高度と地形図の等高線の標高を照らし合わせると、かなり正確に現在地を把握できます。

▲広い斜面にぶつかって尾根の向きが大きく変わりました


▲高度からも尾根の合流地点であることが確かめられました

自分が立っている地面の傾斜、広さ、向き、高度など複数の要素を組み合わせて地形図と合っていれば、大きな安心と読図が正確にできているという自信を持てます。

次に現れる変化も、地形図をよく見ておけば予測がつき、誤った方向へ踏み込むようなミスも未然に防げるのです。ここでは、大きな尾根に合流後、平坦から一旦わずかに下り、方位が左に30度ほど変わるという変化が予測できました。この角度が変わるコルで直進気味に伸びる右側の尾根に迷い込まないように注意するのがポイントです。正しく進んでいれば、尾根は再び登り坂になります。

▲わずかな下り。勢いで下り続けないよう、周囲をよく観察し、左手に登り返す尾根を探します

▲見つけた尾根が地図で予定している進路の方位と合っているか確認します

再び大きく明瞭な尾根に取り付くことができました。次の変化を地図の先読みで頭に入れたらペースを上げて登りましょう。途中でまた少し尾根の向きが変わりましたが、すでに先読みして方位角をコンパスにセットしてあったのでコンパスだけで確認できました。

高度も順調にかせいで、傾斜が緩くなれば間も無く矢ノ音のピークが見えてくるはずです。次第に頭上が明るくなり、最後の急な上り坂の上は坂が終わっているようです。最後の急傾斜をじっくり登ると、ヒョッコリと山頂に飛び出しました。
(※山頂など標高のわかる場所ではプロトレックの高度を補正しましょう。)

▲コンパスの(自分から見て)左の辺で、山頂まで、ほぼまっすぐの方位を調べています


▲いま自分が立っている場所が平坦なことも地形的特徴の一つです

▲山頂まで高度差50m。最後の平坦地にいることがわかりました

▲最後の50mは杉植林の急坂でした。焦ってペースを乱さないようゆっくり登ります

▲頭上を見上げると手入れの行き届いた美しい植林でした

▲スッと傾斜がなくなると、樹間から周囲が見渡せる山頂でした


参加者を代表してモデルになっていただいたO崎さん。充実の笑顔です


▲山頂から見える陣馬山。事前に方位角を調べておけば手持ちの地図の範囲になくても山座同定できます


▲手早くできるアスザックフーズのフリーズドライスープを作って昼食にしました。いただきます


▲あらためて枝の隙間から陣馬山を確認


▲ここからは登山道も道標もありますが、まだ道のりが長いので先を急ぎます


▲道標があっても、地形図を照らし合わせてルートを確認しましょう


▲地形図で尾根を読み取り進路を確かめます。登山道は尾根より少し南の斜面にありました


▲時には道標が多すぎて道に迷うことだってあります


▲あえて登山道を歩かず、地形図に紫色の線を引いた尾根上を忠実に辿ってみました


▲下山路に選んだのは細くて急な尾根。この尾根にも道はありませんが突入します


▲地図に道はなくても通っている人はいるようで、急な場所にはトラロープが


▲最後の最後にもう一度確認


▲明らかな道になりました


▲人家も見えてきたのでもう安心です

山頂からは登山道も整備されて、親切すぎるほどの数の道標が出てきて戸惑いました。地元の地名に通じている人にはわかるかもしれませんが、あらかじめ調べた中にない地名で表示してあると混乱するばかり。道標さえあれば迷わないとは、言えないことを実感しました。

道のついていない尾根を下っていて注意することは、最後まで尾根上を下ること。かなり下ったからと思って谷に入り込むといきなり傾斜が増して崖になる場合もあるので大変危険です。総じて急斜面は登ることより下ることの方が難しく、無理に下り続けることは滑落のもとです。

さて、講習会はこうして無事に終了しました。山は街中を歩くのとは違います。立体的な要素が歩く道の難易度を左右します。事前に目的の山の地形図を十分読み込んで、立体的に理解してから出かけたいものです。もちろん、地形図とコンパスを持参し、できれば高度計も装備に加えられれば言うことありません。

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